ヘルスケアセクターは、医療や健康に関わる産業です。
人々の健康や生命を守るサービスや製品は、いつの時代でも需要があります。
そのため、不況に強く、景気に左右されないディフェンシブなセクターです。
長期的に優れたリターンを発揮しています。S&P500指数を上回る実績があり、1957年から2012年までのセクター別実質リターンではトップの結果を出すセクターでした。
しかし、このセクターは特有のリスクもあります。
医療機器や医薬品は政府の規制や承認が必要であり、長期の開発期間と多額の開発費が必要です。
医療訴訟や特許期間の終了、競合の登場による開発終了のなど予期せぬリスクを考慮しておきましょう。
セクターは景気循環サイクルによって異なるパフォーマンスを示します。
米国投資をするための基本の知識となるため、確実にしっかりと身に着けておきましょう。
ヘルスケアセクターが強い経済状況
ヘルスケアセクターは経済状況に関わらずいつの時代も人々からのニーズのある製品・サービスを提供している業界であり、不況や紛争など世界経済が不安定な状況でも安定した成長を見せるディフェンシブセクターです。
景気は循環します。過去の実績からマクロ経済の視点から体系的に構築されたものがセクターローションと景気サイクルです。
景気サイクルとは、経済が拡大期と収縮期を繰り返す現象のことです。一般的に、景気サイクルは以下の4つのフェーズに分けられます。
- 拡大期:経済成長が加速し、失業率が低下し、消費者や企業の信頼感が高まる期間です。このフェーズではシクリカルな景気に敏感なセクターが好調になります。主に素材、工業、一般消費財(耐久消費財)、金融、情報技術などのセクターです。
- 過熱期:経済成長がピークに達し、インフレ圧力が高まり政策金利が上昇する期間です。このフェーズでは、景気にあまり影響されないディフェンシブなセクターが強くなります。ディフェンシブなセクターには、生活必需品、ヘルスケア、公益事業などが含まれます。
- 減速期:経済成長が減速し、失業率の上昇で消費者や企業の信頼感が低下する期間です。このフェーズでは、安定的な収益や配当を提供するセクターが支持されます。安定的なセクターには、コミュニケーションサービス(電気通信サービス)、不動産などが含まれます。
- 収縮期:経済成長がマイナスに転じ、失業率の上昇とインフレ圧力の低下で政策金利が低下する期間です。このフェーズでは、シクリカルなセクターが再び活況を呈します。これは、経済の回復を先取りする投資家の行動によるものです。
経済は景気の強弱と金利の高低によりサイクルしています。
各フェーズで業績が伸びるセクター以下のとおりです。
<拡大期>経済成長
<過熱期>景気が過熱
<過熱期>物価が上がりインフレに
<過熱期>インフレ抑制で金利が上がる
<減速期>景気後退
<収縮期>不況
<収縮期>抑制解除により金利が下がる
<拡大期>景気回復
経済成長(はじめに戻る)
株価はこの通りに推移しません。これは、投資家や機関が業績が伸びそうな銘柄/セクターを先に仕込んでいるからです。
株式市場は実経済の半年先を読むと言われています。
投資で資産を伸ばすためには、様々な指標を基に半年先のセクターに目を向けるようにしましょう。
実際に株価が伸びるセクターは以下のとおりです。
復習|基本の11セクター
米国の市場は大きく11のセクターに分けられます。
エネルギー Energy | 金融 Financials |
生活必需品 Consumer Staples | 情報技術 Information Technology |
公益事業 Utilities | 資本財 Industrials |
ヘルスケア Health Care | 素材 Materials |
コミュニケーションサービス Communication Services | 一般消費財 Consumer Discretionary |
不動産 Real Estate |
セクターは市場全体を俯瞰的に把握するには非常に優れた指標です。
ヘルスケアセクターをきちんと理解するために「インダストリーグループ」と「インダストリー」の考え方を学びましょう。
復習|セクターとインダストリーグループとインダストリーの関係
11のセクターは24のインダストリーグループ(産業群)に分けられています。
インダストリーグループは更に69のインダストリーに細分化されます。
インダストリーは更にサブインダストリーに分けれられます。
最新情報:GICS – グローバル産業分類規格 – MSCI
セクター分類だけで市場を見るだけでも良いですが、経済の状況に応じてインダストリーグループ、インダストリーへと目を落としてみましょう。
セクターとインダストリーについての記事は以下のとおりです。復習しておきましょう。
本題|ヘルスケアセクターの紹介
米国株のヘルスケアセクターとその下位グループは以下の通りです。
セクターのインダストリーを知っておくと、米国株の銘柄を調べたり分散投資をしたりするときに便利です。また、ヘルスケアセクターやインダストリーグループに連動するETFもありますので紹介させていただきます。
■ヘルスケアセクターに連動するETF
ヘルスケア・セレクト・セクターSPDRファンド(XLE):ステート・ストリート社
iシェアーズ 米国ヘルスケア ETF(IYH): ブラックロック社
バンガード・ヘルスケアETF(VHT):バンガード社
ETFは各社で構成銘柄と比率が異なりますので、購入前に確認しておきましょう。
インダストリーグループ|ヘルスケア機器・サービス
ヘルスケアセクターのインダストリーグループは「ヘルスケア機器・サービス」と「医薬品、バイオテクノロジー、生命科学」に分かれます。
ヘルスケア機器・サービスは、ヘルスケア機器や医療機器、ヘルスケア用品、医療用品などの製品を生産・流通する企業です。FDAなどの規制機関からの承認や許可が必要であり研究開発投資が重要です。
インダストリー | ヘルスケア機器&ヘルスケア用品
ヘルスケア機器&ヘルスケア用品のインダストリーは以下のサブインダストリーで構成されます。
■ヘルスケア機器&ヘルスケア用品インダストリーに連動するETF
SPDRヘルスケア機器ETF(XHE):ステート・ストリート社
iシェアーズメディカルデバイセズ ETF(IHI): ブラックロック社
・ヘルスケア機器 Health Care Equipment
ヘルスケア機器および医療機器の製造業者です。薬物送達システム、心血管および整形外科用機器、診断機器のメーカーも含まれます。
■代表的な銘柄
メドトロニック(MDT)、ストライカー(SYK)、インテュイティブサージカル(ISRG)
・ヘルスケア用品 Health Care Supplies
ヘルスケア用品および医療製品消耗品の製造業者です。アイケア製品や病院用品、安全針と注射器も含まれます。
■代表的な銘柄
ジョンソンエンドジョンソン(JNJ)、バクスターインターナショナル(BAX)、べクトンディッキンソン(BDX)
インダストリー | 医療従事者とサービス
医療従事者とサービスのインダストリーは以下のサブインダストリーで構成されます。
■医療従事者とサービスインダストリーに連動するETF
SPDR ヘルスケアサービシズETF(XHS):ステート・ストリート社
iシェアーズ 米国ヘルスケアプロバイダーETF(IHF): ブラックロック社
・ヘルスケア販売業者 Health Care Distributors
ヘルスケア製品および医療機器の販売業者や卸売業者です。
■代表的な銘柄
マッケソン(MCK)、カーディナルヘルス(CAH)、アメリソースバーゲン(ABC)
・ヘルスケアサービス Health Care Services
患者への医療サービスを提供する企業です。透析センター、ラボ検査サービス、薬局管理サービスも含まれます。また、事務サポートサービス、回収代行サービス、人材派遣サービス、アウトソーシングされた販売およびマーケティング サービスなど、医療提供者にビジネス サポートサービスを提供する企業も含まれます。
■代表的な銘柄
CVSヘルス(CVS)、HCAヘルスケア(HCA)、ラボラトリーコープオブアメリカ(LH)
・医療施設 Health Care Facilities
病院、養護施設、リハビリテーションセンター、動物病院などの医療施設の所有者および運営者です。
■代表的な銘柄
ユニバーサルヘルスサービシズ(UHS)、テネットヘルスケア(THC)、コミュニティヘルスシステムズ(CYH)
・マネージド ヘルスケア Managed Health Care
健康維持機構(HMO)およびその他の管理計画の所有者および運営者です。
進国の中で唯一国民皆保険制度を備えていません。高齢者(メディケア)と低所得者(メディケイド)ではない大半の米国市民は企業の提供する健康保険に加入しています。
■代表的な銘柄
ユナイテッドヘルス(UNH)、アンセム(ANTM)、センティーン(CNC)
インダストリー | 医療技術
医療技術のインダストリーは以下のサブインダストリーで構成されます。
ヘルスケアテクノロジー Health Care Technology
医療提供者に情報技術サービスを提供する企業です。アプリケーションやシステム、データ処理ソフトウェア、インターネットベースのツールが該当します。また、IT コンサルティング サービスを医師や病院などに提供する企業も含まれます。
■代表的な銘柄
テラドッグ(TDOC)、サーナー(CERN)、ヴィーバ・システムズ(VEEV)
インダストリーグループ|医薬品、バイオテクノロジー、生命科学
ヘルスケアセクターのインダストリーグループは「ヘルスケア機器・サービス」と「医薬品、バイオテクノロジー、生命科学」に分かれます。
医薬品、バイオテクノロジー、生命科学(ライフサイエンス)は、人々の健康や病気の予防・診断・治療に関わる製品やサービスを提供する産業です。
医薬品は、化学合成や天然物由来の物質を用いて作られる薬剤です。
バイオテクノロジーは、生物学的なプロセスや生命体を利用して新しい技術や製品を開発する分野です。
生命科学は、生命現象や生物学的なシステムを研究する分野です。
インダストリー | バイオテクノロジー
バイオテクノロジーのインダストリーは以下のサブインダストリーで構成されます。
■バイオテクノロジーインダストリーに連動するETF
SPDR バイオテクノロジーETF(XBI):ステート・ストリート社
iシェアーズバイオテクノロジーETF(IBB): ブラックロック社
・バイオテクノロジー Biotechnology
遺伝子解析や遺伝子工学に基づく製品の研究、開発、製造、マーケティングを行う企業です。 人間の病気を治療するためのタンパク質ベースの治療法を専門とする企業が含まれます。 ヘルスケア用途を持たないバイオンテックは除外されます。
■代表的な銘柄
アムジェン(AMGN)、ギリアド・サイエンシズ(GILD)、バイオジェン(BIIB)
インダストリー | 医薬品
医薬品のインダストリーは以下のサブインダストリーで構成されます。
■医薬品インダストリーに連動するETF
SPDR医薬品ETF(XPH):ステート・ストリート社
iシェアーズ米国医薬品ETF(IHE): ブラックロック社
・医薬品 Pharmaceuticals
医薬品の研究、開発または製造に従事する企業です。 動物用医薬品も含まれます。
■代表的な銘柄
ファイザー(PFE)、メルク(MRK)、ジョンソンエンドジョンソン(JNJ)、アストラゼネカ(AZN)、ノバルティス(NVS)
インダストリー | 生命科学ツール&サービス
生命科学ツール&サービスのインダストリーは以下のサブインダストリーで構成されます。
当インダストリーに連動するETFは見つけられませんでした。(もしあれば教えてください)
・ライフ サイエンス ツールとサービス Life Sciences Tools & Services
創薬や機器開発のために、分析ツールや臨床試験サービスなどを提供する企業です。 製薬やバイオテクノロジー業界にサービスを提供する企業です。
■代表的な銘柄
サーモフィッシャーサイエンティフィック(TMO)、ダナハー(DHR)、アジレントテクノロジーズ(A)、パーキンエルマー(PKI)
以上が米国株のヘルスケアセクターについての説明です。
ただし、これらの関係は必ずしも一定ではなく、時代や事情によって変化します。
投資判断を行う際には、他の要因も考慮し、複数の情報収集窓口を持つようにしましょう。
では、良い投資ライフを。