コミュニケーションサービスセクターは、インターネット、通信、メディア、広告などの産業です。
2018年に米国株のセクター再編によって誕生したセクターです。
それまでは「通信サービスセクター」という名前で、主に電話会社やインターネットプロバイダーなどが含まれていました。しかし、テクノロジーの進化や消費者の嗜好の変化により、通信サービスとメディア・エンターテイメントの境界が曖昧になり、新たなビジネスモデルや競争環境が生まれました。
こうした経緯から見直しが行われ、通信サービスとメディア・エンターテインメントを織り交ぜたセクターが生まれました。
Alphabet(Google)やMETA(Facebook)などBig Techが合流したことで影響力が大きくなり、S&P 500指数の構成比率が2%から10%に増大、多様で成長性の高いセクターとなっています。
セクターは景気循環サイクルによって異なるパフォーマンスを示します。
米国投資をするための基本の知識となるため、確実にしっかりと身に着けておきましょう。
コミュニケーションサービスセクターが強い経済状況
コミュニケーションサービスセクターは逆業績相場や金融相場に強いセクターです。
このセクターは、通信サービスとメディア・エンターテインメントに分かれています。
前者は、電話会社やインターネットプロバイダーは景気に関係なく安定しているため不況に強い側面があり、逆業績相場に強いです。
一方で後者は不況に弱くボラティリティが高い特徴があります。これは不況時には広告や娯楽の市場から縮小するためです。成長性が高く、金融相場に強いという特徴があります。
景気は循環します。過去の実績からマクロ経済の視点から体系的に構築されたものがセクターローションと景気サイクルです。
景気サイクルとは、経済が拡大期と収縮期を繰り返す現象のことです。一般的に、景気サイクルは以下の4つのフェーズに分けられます。
- 拡大期:経済成長が加速し、失業率が低下し、消費者や企業の信頼感が高まる期間です。このフェーズではシクリカルな景気に敏感なセクターが好調になります。主に素材、工業、一般消費財(耐久消費財)、金融、情報技術などのセクターです。
- 過熱期:経済成長がピークに達し、インフレ圧力が高まり政策金利が上昇する期間です。このフェーズでは、景気にあまり影響されないディフェンシブなセクターが強くなります。ディフェンシブなセクターには、生活必需品、ヘルスケア、公益事業などが含まれます。
- 減速期:経済成長が減速し、失業率の上昇で消費者や企業の信頼感が低下する期間です。このフェーズでは、安定的な収益や配当を提供するセクターが支持されます。安定的なセクターには、コミュニケーションサービス(電気通信サービス)、不動産などが含まれます。
- 収縮期:経済成長がマイナスに転じ、失業率の上昇とインフレ圧力の低下で政策金利が低下する期間です。このフェーズでは、シクリカルなセクターが再び活況を呈します。これは、経済の回復を先取りする投資家の行動によるものです。
経済は景気の強弱と金利の高低によりサイクルしています。
各フェーズで業績が伸びるセクター以下のとおりです。
<拡大期>経済成長
<過熱期>景気が過熱
<過熱期>物価が上がりインフレに
<過熱期>インフレ抑制で金利が上がる
<減速期>景気後退
<収縮期>不況
<収縮期>抑制解除により金利が下がる
<拡大期>景気回復
経済成長(はじめに戻る)
株価はこの通りに推移しません。これは、投資家や機関が業績が伸びそうな銘柄/セクターを先に仕込んでいるからです。
株式市場は実経済の半年先を読むと言われています。
投資で資産を伸ばすためには、様々な指標を基に半年先のセクターに目を向けるようにしましょう。
実際に株価が伸びるセクターは以下のとおりです。
復習|基本の11セクター
米国の市場は大きく11のセクターに分けられます。
エネルギー Energy | 金融 Financials |
生活必需品 Consumer Staples | 情報技術 Information Technology |
公益事業 Utilities | 資本財 Industrials |
ヘルスケア Health Care | 素材 Materials |
コミュニケーションサービス Communication Services | 一般消費財 Consumer Discretionary |
不動産 Real Estate |
セクターは市場全体を俯瞰的に把握するには非常に優れた指標です。
金融セクターをきちんと理解するために「インダストリーグループ」と「インダストリー」の考え方を学びましょう。
復習|セクターとインダストリーグループとインダストリーの関係
11のセクターは24のインダストリーグループ(産業群)に分けられています。
インダストリーグループは更に69のインダストリーに細分化されます。
インダストリーは更にサブインダストリーに分けれられます。
最新情報:GICS – グローバル産業分類規格 – MSCI
セクター分類だけで市場を見るだけでも良いですが、経済の状況に応じてインダストリーグループ、インダストリーへと目を落としてみましょう。
セクターとインダストリーについての記事は以下のとおりです。復習しておきましょう。
本題|コミュニケーションサービスセクターの紹介
米国株のコミュニケーションサービスセクターとその下位グループは以下の通りです。
セクターのインダストリーを知っておくと、米国株の銘柄を調べたり分散投資をしたりするときに便利です。また、セクターやインダストリーグループに連動するETFもありますので紹介させていただきます。
■コミュニケーションサービスセクターに連動するETF
コミュニケーションサービス・セレクト・セクターSPDRファンド(XLC):ステート・ストリート社
iシェアーズ グローバルコミュニケーションサービス ETF(IXP): ブラックロック社
バンガードコミュニケーションサービスETF(VOX):バンガード社
ETFは各社で構成銘柄と比率が異なりますので、購入前に確認しておきましょう。
インダストリーグループ|通信サービス
セクターのインダストリーグループは「通信サービス」と「メディア・エンターテインメント」に分かれます。
通信サービスは、電話会社やインターネットプロバイダーが含まれており、景気に関係なく安定しているため不況に強い側面があり、逆業績相場に強いです。
■通信サービスインダストリーグループに連動するETF
SPDR S&P 通信 ETF(XTL):ステート・ストリート社
iシェアーズ 全米電気通信 ETF(IYZ): ブラックロック社
インダストリー | 多様化通信サービス
多様化通信サービスのインダストリーは以下のサブインダストリーで構成されます。
・選択可能なキャリア Alternative Carriers
高帯域幅/光ファイバーケーブルによるネットワーク通信および高密度データ伝送サービスのプロバイダー企業です。
■代表的な銘柄
チャーターコミュニケーションズ(CHTR)、コジェントコミュニケーションズ(CCOI)、コムキャスト(CMCSA)
・総合通信サービス Integrated Telecommunication Services
固定回線の電気通信ネットワークの運営企業や、無線と固定回線の両方の電気通信サービスを提供する企業です。また、エンド ユーザーにインターネットアクセスを提供するインターネットサービスプロバイダーも含まれます。
■代表的な銘柄
AT&T(T)、ベライゾンコミュニケーションズ(VZ)
インダストリー | 無線通信サービス
無線通信サービスのインダストリーは以下のサブインダストリーで構成されます。
・無線通信サービス Wireless Telecommunication Services
主にセルラーまたはワイヤレス通信サービスのプロバイダー企業です。
■代表的な銘柄
Tモバイル(TMUS)、テレフォニッカ(TEF)、アメリカモービル(AMX)
インダストリーグループ|メディア・エンターテインメント
コミュニケーションサービスセクターのインダストリーグループは「通信サービス」と「メディア・エンターテインメント」に分かれます。
メディア・エンターテインメントは、映画やテレビ、音楽、出版物、ビデオゲームなどのコンテンツやサービスを提供します。
不況に弱くボラティリティが高い特徴があります。これは不況時には広告や娯楽の市場から縮小するためです。成長性が高く、金融相場に強いという特徴があります。
インダストリー | メディア
メディアのインダストリーは以下のサブインダストリーで構成されます。
・広告 Advertising
広告、マーケティング、または広報サービスを提供する企業です。
■代表的な銘柄
オムニコム(OMC)、ネクスターブロードキャスティング(NXST)、マグナイト(MGNI)
・放送 Broadcasting
テレビまたはラジオ放送システムの所有および運営企業です。 インターネット放送も含まれます。
■代表的な銘柄
21世紀フォックス(FOX)、グレイテレビジョン(GTN)、ワーナーブラザーズディスカバリー(WBD)
・ケーブル放送&衛星放送 Cable & Satellite
ケーブルまたは衛星テレビ サービスのプロバイダー。 ケーブル ネットワークと番組配信が含まれます。
■代表的な銘柄
コムキャスト(CMCSA)、ディッシュネットワーク(DISH)、リバティグローバル(LBTYA)
・出版 Publishing
印刷物または電子形式の新聞、雑誌、書籍の発行者。
■代表的な銘柄
ニューズコープ(NWSA)、スコラスティック(SCHL)、ピアソン(PSO)
インダストリー | エンターテインメント
エンターテインメントのインダストリーは以下のサブインダストリーで構成されます。
・映画とエンターテイメント Movies & Entertainment
映画やテレビ番組の制作、配給、上映に携わる企業、音楽、娯楽劇場、スポーツチームの制作や配給を行う企業など、エンターテイメント製品やサービスの制作と販売に携わる企業です。 また、オンラインでストリーミング再生されるコンテンツを制作、提供する企業も含まれます。
■代表的な銘柄
ディズニー(DIS)、ネットフリックス(NFLX)、21世紀フォックス(FOX)
・双方向の家庭用エンターテインメント Interactive Home Entertainment
モバイル ゲーム アプリケーションなどのゲーム製品を提供する企業です。 家庭で使用される教育用ソフトウェアも含まれます。
■代表的な銘柄
アクティビジョンブリザード(ATVI)、エレクトロニックアーツ(EA)、任天堂(NTDOY)
インダストリー | インタラクティブメディア&サービス
インタラクティブメディア&サービスのインダストリーは以下のサブインダストリーで構成されます。
・双方向のメディアサービス Interactive Media & Services
独自のプラットフォームを通じてコンテンツおよび情報の作成または配布を行う企業です。収益は主にクリック広告によって得られます。 検索エンジン、ソーシャル メディアおよびネットワーキング プラットフォーム、オンライン広告、オンライン レビュー会社が含まれます。
■代表的な銘柄
アルファベット(GOOG)、メタプラットフォームズ(META)、スナップ(SNAP)
以上が米国株のコミュニケーションサービスセクターについての説明です。
ただし、これらの関係は必ずしも一定ではなく、時代や事情によって変化します。
投資判断を行う際には、他の要因も考慮し、複数の情報収集窓口を持つようにしましょう。
では、良い投資ライフを。