米株2023|金融セクターについてもっと知ろう

金融

金融セクターは、文字通り金融関係全般に係る産業です。

銀行、保険、投資銀行、証券会社、クレジットカード、決済システムなど金融中心の企業で構成されています。

金融セクターは、S&P 500指数の構成銘柄のうち約13%を占める大きなセクターです。

景気循環に非常に敏感なセクターであり、経済成長や金利動向、政策変更に影響を受けやすいです。

セクター上位は高いリターンがありますが、セクター全体ではS&P500を下回るセクターでもあります。

セクターは景気循環サイクルによって異なるパフォーマンスを示します。

米国投資をするための基本の知識となるため、確実にしっかりと身に着けておきましょう。

金融セクターが強い経済状況

金融セクターは金融相場業績相場に強いセクターです。好景気へ向け金利は上昇していきます。銀行は貸出金利を上げることができ、その分収益が増えるためです。

一方、不況対策で政策金利を引き下げ時には注意が必要です。政策金利の上昇はゆっくり上がりますが、下がるのは一瞬です。

政策金利が下がると銀行の収益は減り、株価下落に繋がります。

景気は循環します。過去の実績からマクロ経済の視点から体系的に構築されたものがセクターローションと景気サイクルです。

景気サイクルとは、経済が拡大期と収縮期を繰り返す現象のことです。一般的に、景気サイクルは以下の4つのフェーズに分けられます。

景気サイクル
  • 拡大期:経済成長が加速し、失業率が低下し、消費者や企業の信頼感が高まる期間です。このフェーズではシクリカルな景気に敏感なセクターが好調になります。主に素材、工業、一般消費財(耐久消費財)、金融、情報技術などのセクターです。
  • 過熱期:経済成長がピークに達し、インフレ圧力が高まり政策金利が上昇する期間です。このフェーズでは、景気にあまり影響されないディフェンシブなセクターが強くなります。ディフェンシブなセクターには、生活必需品、ヘルスケア、公益事業などが含まれます。
  • 減速期:経済成長が減速し、失業率の上昇で消費者や企業の信頼感が低下する期間です。このフェーズでは、安定的な収益や配当を提供するセクターが支持されます。安定的なセクターには、コミュニケーションサービス(電気通信サービス)、不動産などが含まれます。
  • 収縮期:経済成長がマイナスに転じ、失業率の上昇とインフレ圧力の低下で政策金利が低下する期間です。このフェーズでは、シクリカルなセクターが再び活況を呈します。これは、経済の回復を先取りする投資家の行動によるものです。

経済は景気の強弱と金利の高低によりサイクルしています。

各フェーズで業績が伸びるセクター以下のとおりです。

<拡大期>経済成長
<過熱期>景気が過熱
<過熱期>物価が上がりインフレに
<過熱期>インフレ抑制で金利が上がる
<減速期>景気後退
<収縮期>不況
<収縮期>抑制解除により金利が下がる
<拡大期>景気回復
     経済成長(はじめに戻る)

株価はこの通りに推移しません。これは、投資家や機関が業績が伸びそうな銘柄/セクターを先に仕込んでいるからです。

株式市場は実経済の半年先を読むと言われています。

投資で資産を伸ばすためには、様々な指標を基に半年先のセクターに目を向けるようにしましょう。

実際に株価が伸びるセクターは以下のとおりです。

復習|基本の11セクター

米国の市場は大きく11のセクターに分けられます。

エネルギー
Energy
金融
Financials
生活必需品
Consumer Staples
情報技術
Information Technology
公益事業
Utilities
資本財
Industrials
ヘルスケア
Health Care
素材
Materials
コミュニケーションサービス
Communication Services
一般消費財           
Consumer Discretionary   
不動産
Real Estate

セクターは市場全体を俯瞰的に把握するには非常に優れた指標です。

金融セクターをきちんと理解するために「インダストリーグループ」と「インダストリー」の考え方を学びましょう。

復習|セクターとインダストリーグループとインダストリーの関係

11のセクターは24のインダストリーグループ(産業群)に分けられています。

インダストリーグループは更に69のインダストリーに細分化されます。

インダストリーは更にサブインダストリーに分けれられます。

 最新情報:GICS – グローバル産業分類規格 – MSCI

セクター分類だけで市場を見るだけでも良いですが、経済の状況に応じてインダストリーグループ、インダストリーへと目を落としてみましょう。

セクターとインダストリーについての記事は以下のとおりです。復習しておきましょう。

本題|金融セクターの紹介

米国株の金融セクターとその下位グループは以下の通りです。

金融セクターは上位大企業が複数のインダストリーへ展開しているという特徴もあります。

セクターのインダストリーを知っておくと、米国株の銘柄を調べたり分散投資をしたりするときに便利です。また、セクターやインダストリーグループに連動するETFもありますので紹介させていただきます。

金融セクター Financials
■銀行 Banks
銀行 Banks

預金や貸付などの銀行業務を行う企業です。個人や法人に対して、資金の預かりや貸し出し、送金や決済などのサービスを提供します。

■金融サービス Financial Services
金融サービス Financial Services

銀行業務や保険業務などの金融サービスを提供する企業です。個人や法人に対して、資金の預かりや貸し出し、投資や証券、資産運用や保険などのサービスを提供します。

消費者金融 Consumer Finance

個人向けにクレジットカードや消費者ローンなどの金融サービスを提供する企業です。個人の購買力や資産形成を支援するサービスであり、自動車や教育や住宅などの購入や改修に用いられることが多いです。

資本市場 Capital Markets

資本市場に関するサービスを提供する企業です。株式や債券などの有価証券の発行や取引が行われ、企業や政府が資金調達を行い投資家が投資機会を得る場です。

不動産投資信託 Mortgage Real Estate Investment Trusts (REITs)

住宅ローン、商業用抵当借入のサービス、組成、購入、証券化を行う会社です。住宅ローン担保証券やその他の住宅ローン関連資産に投資する信託も含まれます。

■保険 Insurance
保険 Insurance

生命保険、損害保険、再保険など多岐にわたる保険などの製品を販売する企業です。景気に左右されにくい安定したビジネスです。

■金融セクターに連動するETF

 ファイナンシャル・セレクト・セクターSPDRファンド(XLF):ステート・ストリート社

 iシェアーズ 米国金融 ETF(IYF): ブラックロック社

 バンガードファイナンシャルズETF(VFH):バンガード社

ETFは各社で構成銘柄と比率が異なりますので、購入前に確認しておきましょう。

インダストリーグループ|銀行

金融セクターのインダストリーグループは「銀行」と「金融サービス」、「保険」に分かれます。

銀行は、預金や貸付などの銀行業務を行う企業です。個人や法人に対して、資金の預かりや貸し出し、送金や決済などのサービスを提供します。また、米国の中央銀行を介して他銀行とのお金のやりとりをすることができます。

インダストリー | 銀行

銀行のインダストリーは以下のサブインダストリーで構成されます。

 銀行インダストリーに連動するETF

  SPDRバンクETF(KBE):ステート・ストリート社

  iシェアーズ米国地方銀行ETF(IAT): ブラックロック社 ※地方銀行ETF

・多様化した銀行 Diversified Banks

全米・全世界に展開する大型銀行です。一般的な銀行業務やホールセール、リテールバンキング、中小企業への融資など、多様な金融サービスを提供しています。

 ■代表的な銘柄

 バンクオブアメリカ(BAC)、JPモルガンチェース(JPM)、シティグループ(C)

・地方銀行 Regional Banks

地域に根付いた銀行です。主にリテールバンキングや企業向け融資、住宅ローンや商業用抵当借入などを取り扱っています。

 ■代表的な銘柄

USバンコープ(USB)、トラスコフィナンシャル(TFC)、ピナクルフィナンシャルパートナーズ(PNFP)、キーコープ(KEY)

インダストリーグループ|金融サービス

金融セクターのインダストリーグループは「銀行」と「金融サービス」、「保険」に分かれます。

金融サービスは、銀行業務や保険業務などの金融サービスを提供する企業です。個人や法人に対して、資金の預かりや貸し出し、投資や証券、資産運用や保険などのサービスを提供します。

インダストリー | 金融サービス

金融サービスのインダストリーは以下のサブインダストリーで構成されます。

 ■金融サービスインダストリーに連動するETF

  iシェアーズ米国金融サービスETF(IYG): ブラックロック社

・総合金融サービス Diversified Financial Services

多様な金融サービスの提供者、銀行、保険、資本市場を含む幅広い金融サービスにある程度の関心を持っているが、支配的な事業分野を持たないプロバイダー。

 ■代表的な銘柄

 JPモルガンチェース(JPM)、アメリカンエクスプレス(AXP)、バークシャーハサウェイ(BRK.A)

・マルチセクター保有 Multi-Sector Holdings

3 つ以上のセクターにまたがって大幅に分散された株式を保有している企業です。いずれのセクターも利益や売上が過半数に偏っていません。 保有する株式は主に非支配的なものですが、支配的な性質を含む場合もあります。

 ■代表的な銘柄

 ブラックストーングループ(BX)、カーライルグループ(CG)、KKR(KKR)

・専門金融 Specialized Finance

上記に分類されていない専門的な金融サービスを提供する企業です。 1 つの専門的な事業部門が収益の大部分を占めています。 商業金融会社、リース機関、ファクタリング サービス、専門ブティックが含まれます。

 ■代表的な銘柄

ペイパル(PYPL)、スクエア(SQ)、アフターペイ(SFTPY)、グリーンスカイ(GSKY)

・商業用借入および住宅ローン Commercial & Residential Mortgage Finance

商業用抵当借入や住宅ローン、関連する担保借入サービスを提供する金融会社です。 住宅ローン貸付機関や住宅金融組合、不動産融資商品を提供する企業、ローン サービス、住宅ローンブローカー サービス、住宅ローン保険が含まれます。

 ■代表的な銘柄

ロケットカンパニーズ(RKT)、ユナイテッドホールセールモーゲージ(UWMC)、ペニーマックファイナンシャルサービシズ(PFSI)

・取引および支払い処理サービス Transaction & Payment Processing Services

デジタル決済、モバイル決済の処理業者です。決済サービスプロバイダーやデジタルウォレットプロバイダーなどの取引および決済処理サービスと関連する決済サービスを提供する会社です。

 ■代表的な銘柄

フィサーブ(FISV)、グローバルペイメンツ(GPN)、フィデリティナショナルインフォメーションサービシズ(FIS)

インダストリー | 消費者金融

消費者金融のインダストリーは以下のサブインダストリーで構成されます。

・消費者金融 Consumer Finance

個人信用、クレジットカード、リース融資、旅行関連のマネー サービス、質屋などの消費者金融サービスを提供する企業です。

 ■代表的な銘柄

 マスターカード(MA)、ビザ(V)、アメリカンエキスプレス(AXP)、アライアンスデータシステムズ(ADS)、オンデックキャピタル(ONDK)

インダストリー | 資本市場

資本市場のインダストリーは以下のサブインダストリーで構成されます。

 ■資本市場インダストリーに連動するETF

  SPDRキャピタルマーケッツETF(XCE):ステート・ストリート社

・資産管理と保管銀行 Asset Management & Custody Banks

主に投資管理および/または関連するカストディおよび証券手数料ベースのサービスに従事する金融機関です。 ミューチュアルファンド、クローズド エンドファンド、ユニット型投資信託を運営する会社を含みます。

 ■代表的な銘柄

 ステートストリート(STT)、ブラックロック(BLK)、バンクオブニューヨークメロン(BK)

 ※バンガードグループは非上場企業です。

・投資銀行と仲介 Investment Banking & Brokerage

投資銀行および仲介サービスに従事している企業です。株式や債券の引受、合併および買収、証券貸付およびアドバイザリーサービスを行います。

 ■代表的な銘柄

Eトレードファイナンシャル(ETFC)、インタラクティブブローカーズグループ(IBKR)、LPLファイナンシャルホールディングス(LPLA)

・多様な資本市場 Diversified Capital Markets

多様な資本市場活動に従事する金融機関で、大手企業への融資、投資銀行業務、証券会社、資産管理のうち少なくとも 2 つの分野で大きな存在感を示しています。

 ■代表的な銘柄

ゴールドマンサックス(GS)、モルガンスタンレー(MS)、チャールズシュワブ(SCHW)

 

・金融取引所とデータ Financial Exchanges & Data

証券、コモディティ、デリバティブおよびその他の金融商品の金融取引所、および格付け機関を含む金融意思決定支援ツールおよび製品のプロバイダー。

 ■代表的な銘柄

S&Pグローバル(SPGI)、CMEグループ(CME)、Nasdaq(NDAQ) 

インダストリー | 住宅ローン/不動産投資信託(REIT)

住宅ローン、不動産投資信託(REIT)のインダストリーは以下のサブインダストリーで構成されます。

 ■住宅ローン/不動産投資信託(REIT)インダストリーに連動するETF

  SPDR米国セレクトREIT ETF(RWR):ステート・ストリート社

  iシェアーズ米国REIT ETF(IYR): ブラックロック社

  ※上記ETFは、正確には不動産セクター連動であり以下の企業は含まれません。

・住宅ローン/不動産投資信託(REIT) Mortgage REITs

住宅ローン、商業用ローンのサービスや組成、購入、証券化を行う会社または信託。 住宅ローン担保証券およびその他の住宅ローン関連資産に投資する信託が含まれます。

 ■代表的な銘柄

アメリカンキャピタルエージェンシー(AGNC)、アニーリーキャピタルマネジメント(NYL)、ペニーマックモーゲージインベストメントトラスト(PMT)

インダストリーグループ|保険

金融セクターのインダストリーグループは「銀行」と「金融サービス」、「保険」に分かれます。

保険は、損害保険や生命保険、再保険などを提供します。また、保険仲介サービスも含みます。

インダストリー | 保険

保険のインダストリーは以下のサブインダストリーで構成されます。

 ■保険インダストリーに連動するETF

  SPDR 保険 ETF(KIE):ステート・ストリート社

  iシェアーズ米国保険ETF(IAK): ブラックロック社

・保険仲介 Insurance Brokers

保険および再保険の仲介会社です。

 ■代表的な銘柄

マーシュ&マクレナン(MMC)、エーオン(AON)、ブラウン&ブラウン(BRO)

・生命保険と健康保険 Life & Health Insurance

主に生命、障害、補償、または補足的な健康保険を提供する会社です。ヘルスケアセクターに含まれる医療保険は対象になりません。

 ■代表的な銘柄

 メットライフ(MET)、アフラック(AFL)、リンカーンナショナル(LNC)

・総合保険 Multi-line Insurance

生命保険、健康保険、損害保険に多様な関心を持つ保険会社です。

 ■代表的な銘柄

 アメリカンインターナショナルグループ(AIG)、オールステート(ALL)、トラベラーズ(TRV)

・損害保険 Property & Casualty Insurance

火災保険や自動車保険などの損害保険を提供する会社です。

 ■代表的な銘柄

 プログレッシブ(PGR)、チャブ(CB)、アメリカンファイナンシャル(CINF)

・再保険 Reinsurance

再保険を提供する会社です。再保険とは、保険者がリスクの分散や収益の追求を目的として保有する保険責任の一部または全部を移転し別の保険者がそれを引き受ける保険のことであり、「保険の保険」のことです。

 ■代表的な銘柄

トランスアトランティック(TRH)、スイスリーアメリカ(SRA)、エベレスト(RE)


以上が米国株の金融セクターについての説明です。

ただし、これらの関係は必ずしも一定ではなく、時代や事情によって変化します。

投資判断を行う際には、他の要因も考慮し、複数の情報収集窓口を持つようにしましょう。

では、良い投資ライフを。

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